神戸みなと知育楽座

令和5年度 神戸みなと知育楽座 Part12

テーマ「神戸のみなと・まち・歴史をもっと知ろう!」
~神戸に関係深い人物・事象~
 

第1回講演概要

  日  時  令和5年5月20日(土) 午後2時~3時30分

  場  所  神戸海洋博物館 ホール

  講演題目  「トルコと神戸の懸け橋として
        ~エルトゥールル号の遭難を契機として~」

  講演者   神戸・トルコ友好協会会長
                古川 厚夫 講師

     参加者   60名

 講 演 概 要  (編集責任:NPO近畿みなとの達人)

  はじめに
 1999年のトルコ地震で神戸市と兵庫県が被災地を支援するため、職員を派遣することとなった。トルコ派遣で初めて、和歌山沖での事故がきっかけで親日国トルコを知った。市民レベルでの交流も考え2006年に友好協会を立ち上げた。今回(2023年2月6日)のトルコ地震に対しても何か役に立つようなことがあればと思ったが、前回の派遣経験者も高齢化しており、募金などで協力をと活動を続けている。

2 トルコの概要
 講演会参加者の中にもトルコへ行かれた方はおられるようだが、観光ならイスタンブ―ル、カッパドキアなどであろう。なぜ親日的かも含めこれからお話しさせて頂く。
トルコは国土の大部分はアジアにあり、イスタンブ―ルはヨーロッパに位置している。日本からは飛行機で約13時間かかり、成田や羽田から直行便が飛んでいる。以前は関空からも直行便があったが現在はないので、大使館などを通じて再開を依頼している。いわば遠くて近い国である。
 人口は8500万人と日本の3分の2で、国土の面積は日本の2倍と広い国である。宗教はイスラム教スンニ派が多数である。
 国土は、ロシア、ウクライナ、シリアまたイラクなどに隣接し、現在世界的に注目を浴びている地域にある。NATOに加盟しているがロシア、ウクライナとも関係を持っている。
 紛争中のロシアやウクライナからの輸出、特に穀物の輸出はトルコが深く関わっており、
地政学的にも重要な位置にあり、また地形的にも恵まれた国である。
 チューリップはオランダが有名であるが、原産国はトルコであり食器やタイルなどの図柄
にチューリップがよく使われている。
 歴史的には、オスマントルコとして1299年から約620年続き、1700年代が最盛期で、面積は最大となりヨーロッパからアフリカ大陸、アジア大陸の3大陸の一部を占めていた。1922年戦争に負け領土は小さくなり、トルコ共和国として新たな国家を樹立した。

3 トルコの料理
 世界の3大料理は、フランス料理、中華料理とそれに実はトルコ料理である。オスマントルコで世界を制覇したので3大料理になったかとも思われる。ケバブをはじめシシカバブなど肉料理が有名だが、ヨーグルトを多くの料理に使い、また農業大国でもありトマトなどの野菜も多く使われる。黒海、地中海、エーゲ海と海に囲まれているので魚の料理も多く、刺身はないが、焼いたり揚げたりして食べる。
酒類はトルコワインが有名だが、トルコビールやラクという焼酎に似たお酒などもある。イスラム教は禁酒だが、トルコでは一部では酒が飲めるようになっている。また、ドンドルマ(伸びるアイス)も人気で、神戸では南京町やモザイクにドンドルマの屋台がある。三宮にはトルコレストランが2軒あるので、是非トルコの食文化を体験してほしい。

4 友好の歴史 エルトゥールル号
 エルトゥールル号(右写真)の海難事故は、1890年9月16日和歌山県串本町紀伊大島で発生した。オスマントルコはヨーロッパでの戦争に負けて、各国から不平等条約を結ばされるようになっていた。この頃日本の小松宮殿下がトルコを訪問され、その返礼と日本との友好と平等条約を結ぶ目的で、木造蒸気船で1年近くをかけて日本に来た。明治天皇に拝謁し、3月滞在して友好を深めトルコへ帰るべく横浜港を9月15日に出港した。9月は台風のシーズンでありもう少し滞在をとの意見もあったが出港を強行した。
 来るときも神戸を経由しているので神戸に向かっていたが、折しも、紀伊大島沖での台風による高波で座礁し、船は二つに折れ水蒸気爆発も起こし、樫野崎沖に沈んだ。乗組員の内69名が助け出されたが、587名が殉職した。
 現場付近は、断崖絶壁(右写真)であり、島民は見知らぬ国の負傷者に驚いたが、救助、看護に手を尽くした。昔は紀伊大島と本土とは船でしか結ばれていなかった。(現在は連絡橋がある)島民は貧しい暮らしをしていたが、食料を持ち寄り助けた。現在、紀伊大島には海難記念館があり興味深い品が展示されている。
 ここまでの話は国内でも知られているが、2015年制作された映画「海難1890」では、「今から神戸に行きましょう」のセリフで終わり、また落語家桂春蝶氏の作った創作落語「約束の海」でも残念ながら神戸は出てこない。

5 和歌山から神戸へ
 たまたまドイツの軍船が神戸におり、救出された乗組員はこの船で和歌山から神戸に向かった。神戸では和田岬の病院で一月間療養することとなり(次ページ写真)、皇后陛下から届けられた白衣を着用し、更に和田岬の海岸で犠牲者の法要も行っている。一月間の療養を終えた乗組員たちは、軍艦、比叡と金剛に乗りトルコへ帰ることとなり、神戸港から出港している。
 また、山田虎次郎は義援金を集めトルコ・イスタンブ―ルへ持って行った。山田はトルコで日本語を教えたり貿易の仕組みを教え、日本とトルコの深い関係が始まり、貿易も始まったとされている。
 
 
6 串本町大島の慰霊碑と慰霊祭
 串本町大島では毎年エルトゥールル号の慰霊祭を慰霊碑(左写真)の前で行っており、5年毎にトルコと共催の大規模な慰霊祭が挙行されている。
 トルコは皇室とも繋がりあり、代々三笠宮家が名誉総裁として式典にも出席される。現在串本町では民間のロケット発射場を整備し、新しい魅力作りを進めている。人口は1万5千人の小さな町だが、南海トラフ地震の津波の被害が想定されており、役所などを高台移転するなど、町の発展や安全・安心の取り組みに努めている。 

7 イラン・イラク戦争での邦人脱出
日本とトルコとの友好関係で忘れてはならないのは、イラン・イラク戦争における邦人脱出がトルコの支援によって成功したことである。1985年3月イラン・イラク戦争が始まり、3月17日フセイン大統領はイランの上空を飛ぶ航空機は撃ち落とすとの声明を発表した。当時自衛隊機は飛ばせないし、民間機も安全が保障されないので使用できない。そんな中トルコ航空の2機が215人の邦人のイラン脱出を成功させた。イラン在住のトルコ人は車や徒歩で脱出し邦人を優先させた。トルコ側にとってはこのような行動は、「当然の事」と捉えられている。エルトゥールル号の史実は教科書にも載っており、小さい頃から見聞きしているので「助けられたら助けるのは当然」との考えのようである。
 2015年のエルトゥールル号遭難事故125周年の記念に、共同で映画「海難1890」を制作、記念公開し、更にトルコ航空機には「串本号(漢字)」と名を付けて飛ばしている。このように絆を更に深めている。

8 技術協力
 トルコは、日本の技術の高さを信頼しており、ボスポラス海峡の橋3本の内、1973年イギリスの協力による橋は評判悪く、1988年石川島播磨重工業・三菱重工による第2ボスポラス大橋は耐震技術を含め評価が高い。またトルコは車社会で、橋は頻繁に大渋滞を起こすことから海峡に電車を通す計画が起こり、ボスポラス海峡を通る鉄道の海底トンネルを沈埋工法で大成建設が中心となり施工し評価も高い。

9 エルトゥールル号以外の神戸との関係
 神戸には1935年にトルコ人、インド人などが資金を出し合い建設された日本でいちばん古いモスクがある。次いで東京(代々木)に建設されている。現在神戸モスクの館長はパキスタン人で、礼拝堂は礼拝時間以外に見学ができる。男女で礼拝場所が異なっている。市内でもイスラム信者が増えており、最近は、ビルの中に礼拝所が出来ているところもある。また再度公園にある外国人墓地は、元は居留地内にあったものを昭和初期に再度山へ移したものであり、100近いトルコ人の墓石もある。

10 災害復旧援助
 1999年8月のトルコ地震では、兵庫県、神戸市、JICAが復旧支援等を行った。地震直後は人命救助などが求められ消防、医師なども多数活動している。当時の外務大臣が阪神・淡路大震災を経験した自治体職員を派遣する約束をし、発災10日後に現地に向かった。
 トルコは地震国で日本と同様断層が沢山ある。昔の首都はイスタンブ―ルだが、断層の少ない地域のアンカラへ首都を移している。当時のトルコの建物の特徴として1Fに店が入り中に柱が少ない。つぶれた建物は違法建築が多かったと聞いた。コンクリートやレンガ造りが多く火災はないが、パンケーキ症候群でペシャンとつぶれている。1Fが弱く法律整備を提言したが、法律を守らない姿勢が今年2月の地震でも被害拡大につながったようである。
 派遣されて被災地や自治体などを回り、阪神・淡路大震災の経験から発災後どのようなことが起こるか予想される事案などを提言した。
 2回目は、2002年に提言などが活かされているか確認に行くこととなった。自治体によっては危機管理センターも整備され、倉庫には必需品が備蓄され提言が実現されていた。神戸から送った仮設住宅では、生活の糧を得るためレースの編み物などを作り販売していた。
2019年に駐日トルコ大使が来神し、神戸市と姉妹都市提携をとの要望をされたが、神戸市は数多くの都市提携をしており新たな提携はなかなか困難であり、提携だけでは意味がなく、経済的なつながりの強化が必要だと感じた。
 10月30日はトルコの建国記念日で、当協会も毎年大使館に招かれ交流を深めている。

11 おわりに
 当協会ではトルコとの友好関係を分かりやすく説明する紙芝居を作り、神戸市内の公立図書館へ寄付している。エルトゥールル号の史実やイランでの援助の話、更に東日本震災時のトルコからの消防隊の支援活動なども語っている。「お返しが当然の行動」というトルコの考えも含んでいる。なぜ紙芝居を制作したかは、紙芝居は日本の伝統文化であり、次の世代に残したいとの目的と共に、絆や歴史を理解して欲しいと思ったからである。将来トルコ語に訳してトルコの子供たちにも見て欲しいと考えている。
 今回のトルコ南東部地震では5万人が亡くなり、33万人が避難している。トルコは国土が広いので、町全体が被害を受けていても同じ場所に再び町を作らず、より安全なところに展開するだろう。いずれにしても息の長い復旧、支援活動が必要であり、忘れないでほしい。
 現在各地で募金活動を行っており、3月に250万円の寄付を行った。神戸は阪神・淡路大震災を経験しているので、義援金、募金は多数の方が参画してくれる。海外への物資の支援は課題が多く、例えばトルコは宗教上から豚は食べないので、豚の油を使用したカップラーメンは受け入れられない。支援には現金が一番で、トルコで必要なものが買え、また経済も回ってゆく。
 トルコは観光資源も豊かであり、また、日本から来たといえば歓迎をしてくれる。トルコとの関係をさらに深めて行きたいと思う。ご清聴ありがとうございました。














       講演者 古川厚夫 会長                講演の状況



第2回講演概要

     日  時   令和5年6月17日(土) 午後2時~3時30分

    場  所   神戸海洋博物館 ホール

   講演題目  「嘉納治五郎
            ~講道館柔道創設と東京オリンピック招致」

   講演者   姫路独協大学副学長
                 道谷  卓 講師

   参加者   60名


 講 演 概 要    (編集責任:NPO近畿みなとの達人)

  はじめに
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第3回講演概要

  日  時   令和5年7月8日(土) 午後2時~3時30分


    場  所   神戸海洋博物館 ホール

   講演題目  「小林一三~阪急電鉄創設、宝塚歌劇~」

  講 演 者  神戸外国人居留地研究会会長
                神木 哲男 講師


  参 加 者  87名


 
講 演 概 要    (編集責任:NPO法人近畿みなとの達人)

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第4回講演概要


    日   時   令和5年9月2日(土) 午後2時~3時30分

    場   所   神戸海洋博物館 ホール

    講演題目  「ブラタモリで話せなかった神戸居留地」

    講演者   神戸大学講師
                小代  薫 講師

    参加者    138名



 講 演 概 要    (編集責任:NPO法人近畿みなとの達人)

はじめに
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第5回講演概要
    日   時   令和5年10月7日(土) 午後2時~3時30分

    場   所   神戸海洋博物館 ホール

    講演題目  「神戸・兵庫の鳥瞰図
                ~神戸・兵庫を空から見れば~」

    講演者   鳥瞰図作家
                 青山 大介 講師

    参加者   96名



 講 演 概 要   (編集責任:NPO法人近畿みなとの達人)
 
はじめに
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第6回講演概要
    日   時   令和5年11月11日(土) 午後2時~3時30分

    場   所   神戸海洋博物館 ホール

    講演題目  「ユニバーサル社会の現実

    講演者   社会福祉法人プロップステーション理事長
                 竹中 ナミ 講師

    参加者 30名



 講 演 概 要   (編集責任:NPO法人近畿みなとの達人)
 
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